画像診断(内視鏡検査)

内視鏡のゴッドハンドは危険な大腸がんを見逃さない

23.09.18

昭和大学横浜市北部病院 消化器センター長 
特任教授

工藤進英先生

【工藤進英先生プロフィール】
新潟大学医学部卒業後、新潟大学外科、秋田赤十字病院、昭和大学医学部教授、昭和大学横浜市北部病院副院長と、要職を歴任。大腸内視鏡検査数は世界屈指であり、世界で初めて「陥凹型大腸がん」を発見した。世界各国の学会からの招聘も多く、現在も世界を飛び回る日々を送る。名実ともに内視鏡のゴットハンドと呼ばれている。

工藤教授が発見した危険な大腸がんとはどのようなものでしょうか?

以前は、胃がんや食道がんは陥凹型があるけれど、大腸がんはすべてポリープから起こるものと思われていました。しかし、我々が世界で初めて、大腸がんも胃がんや食道がんと同じように最初からがんとして発生しポリープの形ではなく潜り込んでいくタイプのがん、陥凹型があると発見したのです。

これは、正常粘膜での大腸の内視鏡像ですが、ここ(白い円で囲まれた箇所)にほんのわずかな発赤があります。これががんである、ということは誰もわからなかったのですが、そこにインディゴカルミンという色素をかけると、そこが陥凹している(へこんでいる)というのがわかるのです。しかも、この辺縁がちょっとギザギザな状態になっていますね。これは、胃がんも食道がんもこの形、がんに特徴的な形なのです。

陥凹型はなぜそんなに危険なのでしょうか?

がんが大腸にとどまっているあいだは問題ないのですが、がんが血管やリンパ管に浸潤してしまった場合、肺や肝臓に転移し、転移巣でどんどん大きくなってしまうと消化や呼吸機能が低下し、ものすごく早く死に至ることになります。 
陥凹型の進行スピードは、ポリープに比べ10倍から20倍(!)早く、1年程度であっという間に進んでしまいます。 
コロナ禍で大腸内視鏡検査数が減少しているようで、その影響からか大腸がんの死亡率だけが異常に増加している傾向にあります。検査をやらないということは、致命的なことなのです。
このほんのわずかな発赤に、色素をかけることで明確に陥凹だとわかる、ということを我々が世界で初めて示して、世界中で発表したのです。

大腸がんのリスクがあるのはどんな人?検査はいつから始めるべき?

家系の中で大腸がんに罹患した人がいる場合には、遺伝的にも大腸がんリスクを考えたほうがよいですね。がん年齢(20歳前後)に一度検査を受けることをお勧めします。最近は若年者、特に女性の患者さんが増加する傾向にありますね。

運動不足の人、便秘気味の人は要注意です。便の中には微量ですが発がん剤が含まれていて、それが腸に長時間あるということは、粘膜をがん化させる危険性があるのです。

検査について教えてください! 

大腸がんの検査では、レントゲンよりもはるかに診断精度が高い、内視鏡検査が必要です。
内視鏡で、淡い発赤という色の違いを見分け、そこに色素をかけると陥凹が出てきます。それを、我々がオリンパスとタイアップして開発した100倍率、520倍率のカメラで見ていくと、細胞、核まで見ることができます。まるで顕微鏡で見ているような画像が内視鏡検査時にみることができるのです。 
がんというのは、核が腫大しているので、核の大きさを見ただけで「がん」である、とすぐに分かるのです。

工藤教授の検査の秘密と驚きの検査数!

私だと、盲腸まで1~3分程度で内視鏡が入りますので、検査自体は数分で完了してしまいます。腸というのは1m弱ありますが、短くすると60cmくらい。途中でグニュグニュ曲がっているけれど固定点というものが曲がり角にあって、それを必ず通らなければいけない。この固定点にいかに最短距離でたどり着くかが重要です。これは、私が発見した軸保持短縮法という方法ですが、軸を保って腸を伸ばさずに短縮して引っ張り込んで最短距離で内視鏡を挿入していくと、あっという間に入ります。この方法ですと、腸が伸びないのでほとんど痛みはありません。技術の低い医者がやるとお産の苦しみのような痛みを感じることもありますが、私の患者さんが殆ど痛みを感じることがないのは、このためです。 
検査数は、70万例以上、恐らく世界一ではないでしょうか。

「工藤詣」で国内外の内視鏡医が教授に教えを請いたのも納得です!

新潟大学からふるさと秋田にある秋田赤十字病院に移った当時、私は外科医でもありますが、外科手術の前に、他の臓器であれば内視鏡は行わないけれど、大腸の場合まず内視鏡で組織を取って調べないと手術ができないので、外科でたくさん内視鏡検査をやっていたのです。検査を多く行ったことが陥凹型の発見につながりました。 

その後、昭和大学病院から消化器内科と消化器外科と両科の教授として招聘を受け今に至ります。いまや最高齢教授となりましたが、ますます元気ですよ!昭和大学には、内視鏡技術を学ぶために、世界中から医師が山のように勉強に来ました。母国に帰国した医師や外国に送り出した私の弟子たちは、今ノルウェーのオスロ大学の教授になった者、アメリカのメイヨークリニックの教授になった者、イギリスのロンドン大学からも何度も呼ばれてその後教授になった者など、世界中で活躍しています。

検査でがんがみつかってしまったら・・・?

1cm弱のがんであれば、その場で生理的食塩水を入れて盛り上がるかどうか試します。盛り上がってくれば、病巣を切除する。それで治療は終了です。1cmぐらいであれば、内視鏡治療で治る可能性が高いですね。

Ueg weekで発表する工藤教授

海外から検査・治療を希望する患者さんについて

日本の患者さん、海外の患者さん、全世界から検査・治療を受け入れています。最高の検査・最適な治療を提供するのは、我々の使命だと思っています。どうぞ来院ください。

東京内視鏡クリニック

についてクリニック院長の工藤豊樹先生にお話を伺いました。 

クリニックは東京の新宿駅前にある、大腸内視鏡と上部消化管内視鏡の専門クリニックです。 

▶上下内視鏡を同時に希望する場合は、大腸内視鏡にプラス10分程度で実施できます。
▶土日の診療も可能です。
▶内視鏡検査でポリープが見つかった場合には、
2cm以下であれば、検査中に内視鏡でポリープを切除可能です。それ以上の場合には、提携医療機関である大学病院等をご紹介いたします。

設備の特徴を教えてください

最先端の内視鏡機器を導入しています。大きな特徴として、拡大内視鏡といって、100倍~520倍までポリープを診断可能な機器があり、瞬時にそのポリープが良性なのか悪性なのかを診断することが可能であり、状況に適した治療を提供できることが当クリニックの強みでもあります。 
この拡大内視鏡は、当クリニックの特別顧問をしている工藤進英教授が開発されたものです。

外国人の患者さんが来院されたい場合はどうすればよいですか?

当クリニックでは、言葉の問題、スケジュール調整、手配まで、日本エマージェンシーアシスタンス(EAJ)に全面的にサポートをお願いしていますので、安心してご来院ください。