鼻・のど・首(脊椎)
脊椎に対する低侵襲な内視鏡治療の専門病院 世界へ扉を開く岩井グループ
24.02.28
腰痛や背骨の痛みなど脊椎の疾患を中心に、痛みが少なく回復の早い低侵襲な手術に特化した岩井グループ。以前より海外からの患者さんの治療も行っていましたが、このたび、さらにその受入を拡大する方針を打ち出し、2023年9月に海外からの患者様に向けた英語の専用サイトをオープンしました。
理事長の岩井宏樹先生と内視鏡手術の名医である古閑比佐志先生に、岩井グループが提供している医療の強みや、海外からの患者さんへのメッセージをお聞きました。
専門病院の専門性と治療実績により質が向上
患者さんの口コミが4割
EAJ:岩井整形外科病院を中核とした岩井グループ(医療法人財団 岩井医療財団)は、脊椎の内視鏡手術では国内症例の1割に相当する手術件数を扱っていらっしゃるとのことですが、どのようにして患者さんが増えたのでしょうか?
理事長:私たちの法人は1926年に礎として、1990年からは整形専門病院となり、その後2001年に実父の稲波が脊椎の内視鏡手術を始めました。その後古閑先生等においでいただき、特に脊椎内視鏡手術を専門とするようになりました。その歴史の中で、患者さんが患者さんを紹介してくれる、いわゆる「口コミ」で当院のことが広がり、現在では岩井整形外科病院で3割、系列の稲波脊椎・関節病院では4割もの患者さんが、日本中から口コミにより当院を訪れています。
EAJ:専門病院として患者さんからの評価が高いのですね。海外からの患者さんには、大学病院の整形外科で診療を受けたいと考えられている人もいるかと思いますが、専門病院の強みとは?
理事長:希少疾患や先端医療など大学病院でないとできない医療もあります。他方、ハーバード大学のスキナー教授が提唱した「フォーカスト・ファクトリー」型の医療は、専門病院が特定の治療や手術に特化し頻繁に行うことで、その治療法の専門性を高め経験が蓄積され、結果として効率性と治療の質が向上する利点があるとしています。当院は技術がものを言う内視鏡手術をメインにした専門病院であり、まさに症例が多いことが技術を引き上げ、それによりさらに患者さんが増えるという好循環が起きていると思います。
古閑医師:ちょうど今も国立大学の医師数名が当院の指導を受けるため、研修に来ています。技術面では専門病院である当院が指導を行い、合併症があるなどの希少な症例は大学病院に紹介するといった連携をしています。
高い診断能力で痛みの原因を突き止める
理事長:医療面で特に私が申し上げたいことは、当院の強みは「診断能力が高い」ということです。患者さんが最もお困りになっているのは「痛み」、その痛みを取ることが治療の目的です。一言で「腰が痛い」と言っても、脊椎の神経圧迫だけではなく、関節の神経や椎間板自体の炎症が原因だったりと、複数の原因が絡み合っていたりもします。診断は、まずブロック注射といって特定の神経、関節、椎間板などに麻酔薬を直接注射し痛みの伝達を一時的に遮断する検査を行い、どの部位が痛みの原因なのかをピンポイントで確実に特定します。この検査を経験豊富な医師が診療の当日に丁寧に行います。低侵襲の治療とは、必要な部分をピンポイントで最小限のダメージで行うことですが、原因のあるところだけを過不足なく治療するためには、当院では正確な診断をとても重要視しています。こういったことができるのも専門病院ならではだと思います。
最小侵襲手術で患者さんの負担減を追求
EAJ:では次に、「低侵襲の治療」について、岩井グループで脊椎内視鏡手術のスペシャリストとして主導的に治療を行っている古閑先生にお話を聞きたいと思います。外国人専用サイトでも手術のビデオがいくつもあったのを拝見しましたが、とても詳しい説明がありました。痛みを取るために、神経を圧迫している部分の骨を削ったり靱帯を取ったりする治療において、現在、先生が行われている治療が「低侵襲」であるのはどのような点でしょうか?
古閑医師:痛みを取るのは今言われたような「除圧術」というものを行うことになるのですが、その方法として、患部をメスでがばっと開いて行う古典的な手術もあります。そうすると開いているので見やすいですが、患者さんの負担も大きくなるわけです。医師が患者さんの負担を減らすことを追求していくなかで、最初はルーペを使って見やすくしたり、顕微鏡を使ったりと工夫していき、カメラを患部に入れて見る「内視鏡」へと発展してきました。私が実施しているのは、内視鏡のなかでも「FESS(”Full-Endoscopic Spine Surgery”の略で完全内視鏡下脊椎手術と訳される)」と言って、直径7mmの微小内視鏡を使用して行う最小侵襲手術です。低侵襲ではない手術だと手術日はずっとベッドで寝た状態になるところ、FESSだと術後3時間で歩くことができ、リハビリもなくあとはご自宅でどんどん歩いていただくという感じです。3cm以上切ると術後も傷の痛みをかなり感じるのですが、私のところでは1㎝未満しか切らないので痛みを抑えることができます。また、手術中に組織が空気に触れると酸化して瘢痕組織(手術した部分の組織が修復の過程で可動性のない硬い組織に変わること)ができるのですが、FESSでは手術中、常に水を還流させているので、これが起こりにくいため、ヘルニアなどの再手術もしやすいというメリットもあります。
海外患者さんも口コミで増加
EAJ:FESSを提供している病院は日本には他にもありますが、海外の患者さんはどのような点を参考に病院選びをすればいいでしょうか。
古閑医師:同じ手術でも手術時間の長さや合併症や再発の発生率などは病院ごとに違います。こういった情報は普通あまり公表しないので比較はできないかもしれませんが、当院では海外の雑誌や学会などにも積極的にこのようなデータを論文として報告しています。例えばヘルニアの再発率は5%と極めて低いです。学術論文は一般の人にはアクセスしづらいかもしれませんが、海外の医師からは論文を見たとよく連絡があります。私立病院では珍しいのですが、海外の医師の研修受け入れも行っており、これまで9名ほどの医師が当院で勉強していかれました。
EAJ:海外から治療を受けに来る患者さんが増えたきっかけは?
古閑:東南アジアのある国の手広くビジネスを手掛けている実業家の方が当院を受診したのがきっかけでした。私は当時から手術のビデオを英語にしてインターネットに上げていたのですが、その方がそのビデオを見た後に連絡をしてきたことが始まりでした。家族友人が総勢20名ほどで来られたのでとても印象に残っています。その方は、来院時には腰の痛みで数メートル程度しか歩けず、日常生活にも支障をきたす状態でした。遠出もできないし、ちょっとした買い物にも行けなかったのが、手術後は自由に歩けるようになり、ご家族たちと日本を旅行して帰ったそうです。その後、来日の際に一度病院に来てくれた際には、「本当によくなってうれしい」と感謝されました。手術の成果を目の当たりにした20人のご家族たちが、同じく腰や背中の痛みに悩んでいる人を紹介して、という形で、その国の方はその後も何人も治療に来るようになりました。他にもアジア圏からの患者さんが多いです。よくならなかった人はあまりいないですね。みなさん、とても喜んで帰って行かれます。
海外患者専門サイトをオープンし、受け入れを本格化
EAJ:以前から海外の患者さんも口コミでいらっしゃっていたのですね。今回、本格的に海外患者さんの受入促進の方針を打ち出されたのは、どのような思いからでしょうか。
理事長:もともと医療インバウンド(海外患者受入)に興味があったのですが、父の跡を継ぎ理事長に就任することになったときに、医療インバウンドを経営の柱の一つに据えようと考えました。「高い技術を持っているのに、国内だけではもったいない」と思ったからです。これまで整形外科医として、ずっと医学の勉強をしてきましたが、アジアの患者さんの受入に役立つネットワークを構築したいということもあり、留学してMBAを取得しました。その後、2020年に理事長に就任しましたが、コロナが明けた今年、満を持して医療インバウンドを本格化しようと、海外患者専用サイトの作成や受入体制を整備するなどの取組みを始めました。
EAJ:専用サイトのビデオの中でも先生は英語でご挨拶されていて、おもてなしの気持ちが伝わりますね。
理事長:私も古閑先生も英語での診療が可能です。
古閑医師:私は3年間ほど中国の病院で仕事をしていたことがあり、実は中国語も少し話せるんです。
海外から患者さんに安心して来院いただくために
古閑医師:当院では、かなり以前から海外の患者さんにも遠隔診療を行っており、来日する前にレントゲンなどの画像だけではなく、実際に患者さんが体をどう動かせるかなどを遠隔画面で確認し、患者さんの現在の状況を確認しています。患者さんにも事前に医師とお話しいただくことで安心して来日できるとおっしゃっていただいています。
EAJ:宿泊や食事など医療面以外はいかがでしょうか。
理事長:稲波脊椎・関節病院の5階には特別室を設けてあります。部屋が空いているときは患者さんのご家族も宿泊していただけることもあります。食事は以前からハラル対応はしていましたが、よりご要望にお応えできるよう、ケータリングの手配も進めています。
日本で治療を受けるためには、言語のサポートや医療滞在ビザも必要になりますが、それは医療コーディネーターと連携してサポートしていますので、当院の受診を希望される際は、まずEAJなど医療コーディネーターにご連絡してください。