骨・筋肉(靱帯損傷・足の骨の異常)

【体験記】人工関節置換術で走れるように 一目で全身の状態を的確に指摘した先生に感激

23.10.16

日本で手術を受けるまで

難しい症例のため日本で手術を希望

ロシア在住の女性の患者さんは、骨盤と足(大腿骨)をつなぐ部分に痛みがあり、歩けはするものの日常生活に支障をきたす状態で、変形性股関節症と診断されていました。韓国に渡り整形外科で精密検査を受けましたが、「日本の医療機関では最も近代的な人工関節の設備があるので難しい手術にも対応できると思うから」との理由で日本での手術を希望し、EAJに連絡がきました。韓国の精密検査では、変形股関節症に加え骨頭壊死と臼蓋(関節の腰骨側)形成不全の合併の可能性も指摘されていました。 患者さんは精力的に事業をこなす実業家で、活発に活動したいのに病気のせいでそれができず、どうにかして治したいとの強い思いをお持ちでした。

人工関節置換術の前に骨移植が必要なことが判明

さっそく人工関節の名医が所属する都内大学病院に医療情報を送ったところ、「臼蓋側に重度の破壊がみられ、人工関節をつけるためにはまず骨移植が必要。大腿骨の壊死部分を切り取り、壊死部分内でも健康な骨を骨移植として利用。移植した骨の骨融合が得られるまで3週間は歩行が不可のため入院。その後人工関節を入れる手術をまずは片足から行い、リハビリも含め約1か月半の入院。3カ月半後に片足がしっかりしたら、もう一方の足の手術・入院・リハビリ。片足ずつであれば手術後に歩くことも可能」との方針が示されました。手術に際して大切なことは「全身状態の把握と股関節の機能、筋力、可動域などの詳細を知ること、手術後のリハビリによりどの程度の機能回復が望めるのかなどの予測」と併せて伝えられ、手術の調整を始める前に来日して診察することになりました。

診察日当日に驚きと感激

診察日当日、診察室に入ってすぐに医師が、手首が大きく変形しているので、変形股関節症の理由は若年性関節リウマチ(JRA)で臼蓋形成不全であろうことを指摘、さらに股関節の影響で膝にも負担がかかっているため膝関節も通常の状態よりもぶらぶらしていることを伝えました。これまで言われたことがないことで、すぐに全身の状態を見抜いたことにとても驚いていました。また、片足の手術後に活発に動けるよう人工関節を入れる際に工夫するという提案や、日本製の人工関節はヨーロッパ人の骨格に合わない可能性もあるという負の可能性についても丁寧に説明されました。患者さんはこれまでの医師からの説明では納得できなくてがっかりして泣いてしまうこともあったけれど、ここでは的確な指摘や心遣いに感激した、と通訳に繰り返し言っていました。

骨移植、人工関節置換手術の効果

骨移植後のリハビリも順調に進み、いよいよ片足の人工関節置換術の術日が近づいてきました。大きな手術の前に患者さんもナーバスになることもありましたが、担当医と診察時に話すと安心するようで、入院して手術の準備が進みました。手術は無事完了。リハビリ中に足の付け根の筋肉の痛みが生じたこともあったが、今まで正常に動いていなかった筋肉が動いてきたための筋肉痛と判明するなどして、順調に回復が進んだため、予定より少し早く退院ができました。その後、お子様の病気などもあり半年後にもう片方の手術を実施しました。退院後は1年に1回程度のフォローアップ診察を受けていました。すっかり痛みもなくなり、普通に歩けるようになったと知らせてくれました。

帰国後の様子

患者さんは帰国直後から、同じように関節の痛みなどで悩む知り合いを何件かEAJに紹介してくれました。手術から3年後に、患者さんの住む地域を出張で訪れた際に、久々の再開を果たしましたが、軽く走る仕草まで見せてくれ、想像以上の回復に満足しているようでした。心配されていた日本の人工関節が体に合うか、という問題も、患者さんがわりと小柄だったため、結果的にはぴったりのサイズで何の問題もないことが判明しました。 さらに手術から5年後、連絡が来た際に様子を聞いてみたところ、なんとスポーツも少しずつ始めたとのことで、活発に生活を送られているようでした。