治療法(陽子線治療)
【体験記】悪性黒色腫(メラノーマ)を陽子線で治療 問合せから初診まで3週間弱のスピード対応
24.02.28
術後の再発防止の照射を他国ではなく日本で実施したい
可能な限り早く照射をした方がよいとの見解
皮膚がんの一種で、特に白色人種に多いと言われる悪性黒色腫(メラノーマ)。病気の進行が極めて早く、手術をしても早い時期に再発や転移することが少なくありません。この患者さんも、ヨーロッパ地域の出身で、左鼻の粘膜にメラノーマができました。鼻の切開手術をして腫瘍を切除したものの再発。再度手術をして成功したものの、再発が起こらないように現地でなるべく早い時期の陽子線の照射を勧められたとのことです。11月末に手術を行い、問い合わせがあった12月半ばに当社に問い合わせがありました。進行が早いがんなのでスピーディーな対応が求められます。患者さんはすでにドイツとイスラエルから治療が可能との見解をもらっていましたが、どうしても陽子線の治療実績が豊富な日本で治療をしたいとのご要望でした。
複数医療機関に問い合わせ最速での治療を実現
早速医療情報や術前術後の画像を患者さんに送ってもらい、今回は海外でも治療の適用可否が確認されているため、2か所の陽子線治療施設に問い合わせを行いました。両施設から「適用あり」との返答をいただきましたが、一方からは、可能な限り早い方がよいので年明けすぐに受入可能である旨、他方からは早くても2月の受入になってしまうので他でもっと早くできるのであればそちらの方が良いとの返答をいただきました。患者さんに報告し、最速での初診を目指して医療機関と調整を行い1月4日に初診を予約することができました。 蛇足ですが、患者さんご自身でもう1か所の国内大学病院にも画像を送り問合せをしたらしいのですが、病院で開ける状態で送れなかったので、そのやり取りに時間がかかっているうちに最速の調整日が決まったという経緯もありました。EAJでは、あらかじめどのような状態で検査画像を送ればよいか各医療機関と調整してあるため、急がなければならない場面でもスムーズに医療機関と情報共有を行うことができます。
年末年始の特別ビザ発給を調整
医療機関からは3日ほどで受入可能の返答を受けましたが、来日までに年末年始を含め2週間強しか時間がありません。患者さんが滞在する国地域の日本領事館に相談し、年末年始の特別ビザ発給について調整を行いました。ビザの身元保証をする前に患者さんから急いで治療費概算額を銀行送金していただき、確認と同時に最も早く届く方法で現地に身元保証書の原本を送りました。患者さんは領事館から離れた場所に滞在していたため、ビザ手続きの専門会社に連絡を取り代理申請と受け取りを調整しました。ところが、国際郵送サービスが予定通りに届くことが珍しい地域だったため、予定日になっても原本が届きませんでした。このため、領事館に掛け合い、原本は届生き次第至急持ち込む約束で、ビザ発給の手続きをしてもらうよう交渉しました。人道的配慮をしていただき、出発当日1月2日の朝にビザが特別発給され、ぎりぎり代理申請者が日本へ出発するその国の首都の空港で患者さんにビザを手渡しすることができたのでした。当時本件をコーディネーターとして担当していた私も、この年のお正月はゆっくりと休めた記憶がありません。
副作用の出やすい頭頚部の照射を丁寧に診察
手術の取り残しを中心に15回の陽子線照射
ビザ関係の手続きを待つ間に、滞在するマンスリーアパートや送迎車の手配を大急ぎで行います。年末休みに入る前に全ての手配を完了させる必要があるため、おおわらわでした。この年のこの医療機関の最初の患者さんはこの患者さんでした。1月4日に初診。その後PET検査で転移の確認、MRI・CT撮影、血液検査などを行い、その後に固定具作成や治療計画作成などの準備期間に10日~2週間を要します。検査の結果リンパ腺や脳などへの転移がみとめられないものの顔の左半分にはっきりと影がみられることから手術の取り残しがある可能性があり、その部分へ照射をすることが決まりました。照射は週3回を合計15回行うことになりました。照射後には鼻の穴の中にかさぶたができて鼻づまりや鼻血など副作用が出るので、その確認のために週2回の診察があります。頭頚部のがんの場合、副作用も比較的でやすいため、照射後2週間は日本に残り副作用の確認を行うことになるため、帰国は3月になるだろうという目安が示されました。治療計画が明らかになったので、それに合わせてマンスリーアパートなども延長します。航空券も帰国日を決めないオープンチケットで来たものの、到着後1か月半頃までには帰国日時を航空会社に知らせる必要がありますが、その時までに帰国日が決らないかもしれない事情を説明し、医療機関からのレターを持って特別にその日以降に帰国日を設定できる交渉を航空会社と行いました。
治療後のフォローアップ
治療後に日本の担当医師から陽子線を勧めた現地医師に診断書を作成。それをその国の言語に翻訳し持ち帰ってもらい、3か月後にMRIとPET検査を現地で行い、その画像を送ってもらうことになりました。患者さんが済んでおられる地域ではPET検査ができないため、検査のためにまた近くの外国に行くかもしれないとのことでした。
帰国の予定日が近づき、粘膜の回復具合も順調とのことが診察で確認できました。現地で休職した証明書を役所に提出する必要があるとのことで、医療機関からのレターの翻訳に在日大使館で翻訳証明をつけてもらったり区役所でアポスティーユを取得したりと帰国の準備を進めます。帰国後1か月半経過後に、日本の担当医師からMRIを取るよう連絡、3か月後にはPETを取るようにリマインドの連絡がありました。MRIの撮影の詳細などについても助言をいただき、現地で撮影したMRIの結果は、「腫瘍は縮小傾向です。悪性黒色腫の治療経過では、3ヵ月から6ヵ月までゆっくり縮小してきますので、反応としては通常の範囲」とのことでさらに3か月後に経過観察のためMRI画像を送るように指示が出ました。
PET画像が届く際に、患者さんから上あご左側、左目に定期的に痛みが発生して、また、左側頬のむくみ・赤みは残っているなどの相談もありましたが、治療前の画像と比較してそれほど心配はいらないなどの助言を行いました。さらに数回、数か月毎に治療後のフォローアップ確認を日本の医師から受けました。