治療法(陽子線治療)

症例でわかる頭頚部がんの陽子線治療 舌がん・口腔底がん・口蓋腺様嚢胞癌の実例 ~南東北陽子線治療センター

26.10.23

頭頚部がんと診断されたとき、私たちは何を望むでしょうか。

単なる治療の成功だけでなく、術後の生活の質と自分らしさを取り戻すこと。食べる喜び、味わう感覚、話す自由を取り戻す道として、陽子線治療を核にした治療を紹介します。日本経済新聞「余命1年と宣告されて 上顎洞がん、「大丈夫」の言葉に命預ける」(2026年8月29日~)でも注目された実績を持つ南東北陽子線治療センターからご提供いただいた症例です。

あなたや身近な方の未来を想うヒントがここにあります。

症例 ①

40歳・女性


  • 舌がん(左側舌扁平上皮癌)
  • 手術を希望せず、陽子線治療と動注化学療法を選択したケース

診断

・ 左側舌扁平上皮癌
・ cT4aN1M0 ※がんの進行度を表す TNM分類

舌のがんが周囲組織に広がり、首のリンパ節への転移はあるものの、遠隔転移は認められない進行した状態。

治療の経緯

難治性の口内炎をきっかけに受診し、舌がんと診断されました。

再建術を伴う手術は希望されず、全身化学療法・放射線治療・陽子線治療・動注化学療法を組み合わせた治療が行われました。

治療内容

総線量:69Gy  ※Gyは放射線量の単位。「体の組織がどれだけ放射線エネルギーを受けたか」を示す。

・ 全身化学療法(5-FU+シスプラチン)
・ X線治療:36Gy/20回
・ 陽子線治療:33Gy(RBE)/15回
・ 動注化学療法(シスプラチン):5回

治療中

・ 粘膜炎
・ 一時的な嚥下障害
・ 味覚障害

これらの影響で一時的に胃ろうを造設しましたが、治療後2か月で経口摂取が可能となり6か月で胃ろうは抜去されました。

治療後

  • 治療後6か月後のPETで集積消失を確認
  • 治療2か月後より経口摂取を再開
  • 治療後10年以上、再発なし

症例 ②

66歳・男性(ワインソムリエ)


  • 口腔底がん(口腔底扁平上皮癌)
  • 口腔機能を大切にする職業の患者さんが選択した治療例

診断

・口腔底扁平上皮癌
・cT4aN2cM0 

 ※がんが周囲組織に広がり、両側の頸部リンパ節に転移を認めるが、遠隔転移はない状態

治療の経緯

口底部の腫瘍と嚥下障害を主に訴え受診し、大学病院で診断されました。

仕事上、口腔機能を重視していたこともあり、手術以外の選択肢として放射線治療・陽子線治療・動注化学療法を組み合わせた治療が行われました。

治療内容

総線量:66Gy

・IMRT(強度変調放射線治療):40Gy/20回
・ 陽子線治療:26Gy(RBE)/13回
・ 動注化学療法(シスプラチン):4回

治療中

・ 粘膜炎
・ 一時的な味覚障害

症状はみられたものの、経口摂取は継続可能でした。

治療後

  • 治療後1年での良好な局所コントロールを確認
  • 治療後日常生活へ復帰し、シェフを続けられたが、アルコールを継続摂取していたこともあり治療後3年で経過観察中に新規舌癌が出現し、早期がんのうちに切除術を施行

症例 ③

42歳・男性

  • 硬口蓋腺様嚢胞癌
  • 頭蓋底まで進展した腫瘍に対する陽子線治療の例

診断

・ 右側硬口蓋腺様嚢胞癌
・ cT4bN0M0  

 頭蓋底まで広がった進行硬口蓋がん(リンパ節転移・遠隔転移なし

治療の経緯

うわあごの腫れをきっかけに受診し、口蓋腺様嚢胞癌と診断されました。

腫瘍は頭蓋底まで進展しており、外科的切除が難しいと判断されたため、陽子線治療と動注化学療法の併用治療が行われました。

治療内容

・ 陽子線治療:70.4Gy(RBE)/32回
・ 動注化学療法(シスプラチン):6回
・ 浅側頭動脈よりカテーテルを留置

治療後

  • 治療後1年:腫瘍縮小を確認
  • 両肺転移が生じたが2カ所に陽子線治療施行し制御
  • 治療後5年:放射線関連の脳壊死を認めたものの、その後安定し10年が経過

治療後の暮らしや大切にしたいことは、一人ひとり異なります。

治療による副作用やその後の経過もさまざまであり、すべての方に同じ結果が得られるわけではありません。しかしながら、今回ご紹介した症例のように、病状や患者さんの希望に応じて、陽子線治療と動注化学療法を組み合わせる治療が選択肢となる場合があります。


ご紹介した症例が、治療の選択肢について考えるきっかけとなれば幸いです。